ワシントン・ポスト紙と『ゼルダの伝説』シリーズ総合プロデューサーである青沼英二氏、ディレクターの藤林秀麿氏のインタビューで、延期を発表した2022年3月時点でほとんど完成しており、そこからの約1年はゲームのクオリティ向上などに費やされたことが明らかになった任天堂の Nintendo Switch ソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』。
インタビューでは今作について、他にも興味深い内容が語られています。
Contents
青沼氏は『TOTK』を20回ほど通してプレイしている
『ゼルダの伝説』シリーズ総合プロデューサーである青沼氏は『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の開発バージョンをテストするため、この 2 〜 3 年で 20 回ほど通しでプレイしている。前は1回のプレイに何日もかかっていたが、今は1週間半くらいに短縮されている。
「いまこの年齢でこんなことをしていていいのだろうか?と思うこともありました。結構きついので、もうあまり無理はしたくない」と 60 歳になる青沼氏はインタビューで語った。写真撮影のためにゆっくりと体を下ろして座ると「おじいちゃんみたいだね」と笑顔で呟いた。
「今作『ティアーズ オブ ザ キングダム』の開発は結構きつかったけれど、なんとか乗り切りました」
『BOTW』でクラフトを楽しんでいるプレイヤーがいた
ディレクターの藤林秀麿氏は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に登場する歯車や石板、パドルなどを使って戦車を作りクラフトのアイデアをプレゼン。その後 SNS で『ブレス オブ ザ ワイルド』の中で空飛ぶ機械などを作って遊んでいるプレイヤーの動画を発見した。「その動画はまさに自分たちが『ティアーズ オブ ザ キングダム』でやろうとしていたことであり、それを楽しんで遊んでいる人たちの姿を見ると、自分たちのやろうとしている方向性は皆にとっても楽しい体験になるのだという自信につながりました」
青沼氏は、ウルトラハンドで接着剤のようなものがはみ出しているのが当初受け入れられなかった
青沼氏の木彫職人としての血が、デザイナーと衝突。ウルトラハンドでモノとモノとをくっつけたときに、くっついていることを示す視覚的な補助として接着剤のようなものがはみ出すことがあり、これが受け入れがたかったそう。木彫職人だった青沼氏は「物をつなげて接着するときは、つなぎ目のところの接着剤が見えると気になるので、拭いたりして見えないよう気を使っていました」「スタッフも、接着剤を拭き取ってもう少しキレイに見せたい気持ちもあるのだけれどと言うんです。そして結局、彼らが正しかったんです。この表現では接合するオブジェクトがどこに組み合わされているのかがはっきりわかります。このようなゲーム性はゼルダの精神にぴったり合っていると思います」
開発当初はストーリーがありませんでした
ゼルダらしさは新しい予想を超えた遊びの概念に重点をおいていて、開発当初はストーリーがなかった。藤林氏いわく「ゲームプレイ体験に自信が持てるようになってからストーリーが見えてきます」
『TOTK』はゼルダ史のどの辺り?
『ティアーズ オブ ザ キングダム』がゼルダ史のどこに収まるのか、青沼氏は明言を避けている。
「ファンの皆さんに委ねることになると思います。これからもファンの皆さんの間で議論していただければと思います。その議論がどこに向かうのか、楽しみにしています」
2ndトレーラーの反響が弱かったため、急遽青沼氏によるデモを撮影
2023年2月に公開された2ndトレーラーの反響を受け、開発チームは当初想定していた盛り上がりに至っていない事に気がついた。「ゲームプレイ要素や面白さがどこにあるのかがうまく届けられませんでした」
そこで任天堂は、青沼氏が直接デモンストレーションを行いゲームのコンセプトを説明する13分間のビデオを制作することにしました。
その他:『リングフィットアドベンチャー』やゼルダシリーズ総合プロデューサーとして
青沼氏は『ティアーズ オブ ザ キングダム』がゲームの外での障害の受け止め方を見直すきっかけになれればと考えている。「私たちのゲームが人々の想像力を刺激し、それが実生活に生かされるのであれば、本当に嬉しいです」
青沼氏は疲れているときでも『リングフィットアドベンチャー』でストレスを発散し、レベル 430 に達している。
他の IP には関与せず、仕事上のエネルギーをゼルダに集中している。「大規模なゲームには、それを満たすため多くの新しいアイデアが求められます。他の IP で作ることになったかもしれない新しいアイデアも、僕はゼルダに投入しています」
疲れているけれど、ゼルダシリーズから降りるつもりはありません。
Nintendo NY では発売記念イベントが実施され青沼氏も参加。開店直前の店内で青沼氏はゼルダの商品を見つけ、(定価で)購入しようとした。すると店舗スタッフから「(購入するのであれば)せめて20%オフの従業員割引を受けるべきだ」と言われそれを受け入れた。「あなたのおかげで私は仕事ができているのだから」とあるスタッフはにこやかな表情で語り、青沼氏は笑顔でゼルダのフード付きスウェットを受け取った。