ニューヨークで開催された任天堂の公式ゲーム大会「任天堂ワールドチャンピオンシップ2017」に先立って行われた Business Insider のインタビューで、任天堂アメリカ(NoA, Nintendo of America)の Bill Trinen 氏(シニア・プロダクト・マーケティング・マネージャー)と Doug Bowser 氏(セールス&マーケティング担当 SVP)は、発売開始からわずか4年で幕を下ろした Wii U の失敗から学んだことを、Nintendo Switch (ニンテンドースイッチ) を成功させるためにどう活かしているのかを語りました。
2012年末に世界の主要地域で発売された Wii U。世界で1億台普及し大成功を収めた Wii の後継ハードとして登場した、タッチスクリーン付きのコントローラ「Wii U GamePad」を備え、テレビと手元の液晶との2画面ゲームプレイが最大の特徴でした。
しかしながら、発売時に Wii のときほどわかりやすい提案を出来なかったことや、任天堂自身が大規模な HD 開発に不慣れでソフトを揃えるのに苦労したこと、UI の拙さなど複数の課題を抱えて普及に苦戦。最終的な販売台数は1356万台と低迷しました。
一方で、Wii U の次に登場した Nintendo Switch は、2017年3月の発売から絶好調。店頭で見つけることが難しい状況が続き、2017年6月末までに470万台を販売。2017年4月から2018年3月末までの1年間に1000万台を販売する計画です(海外メディアの報道では、増産により月200万台体制が整い、年間2000万台の目標を達成できるとも)。
今や、スイッチの発売前に任天堂フランスが目標として掲げていた「1年で Wii U の累計に達する」ことも、あながち大げさすぎる目標ではありません。
Wii U から何を学び、教訓としてスイッチの成功に活かしているのか。
実際にゲームを始めるまでの時間
Bill Trinen 氏はまず、ハードウェアの起動時間が大幅に短縮し、すぐにゲームを開始できる点を挙げます。
「Wii U 本体のシステムメニューに着目すると、本体を起動してからゲームを開始するまでの時間は、早くから多くのプレイヤーにとってはフラストレーションが溜まるものでしたし、実際ゲームプレイの妨げになっていました。
Nintendo Switch は持ち運べるマシンですから、すぐにゲームを始められることが非常に重要でした。この点は Wii U 時代に学んだ直接的なレッスンの一例で、焦点を絞って取り組み、劇的に改善した部分です」
Wii U はまず、初回起動時に本体更新が必要で、そこに時間がかかることでユーザーを遠ざけてしましました。
UI が不親切だったり、そもそも本体の動作が遅く、後のアップデートで本体クイック起動メニューが用意されたものの、ソフトの起動や切り替えにかかる時間は最後まで気になりました。
発売時期が、ちょうど iPhone などのスマホや iPad などのタブレット端末の普及にぶつかったこともタイミングが悪く、どうしても似たようなな端末として見られがちな中で、メニュー周りの質の低さが目立ちました。
2画面のゲーム体験を上手く作り上げるメーカーもあったので、システム面の拙さは本当に残念でしたね。
谷間を作らないソフトのリリース間隔
Doug Bowser 氏はもう1つの教訓として、ソフトのリリース間隔を挙げます。
「Wii U ではローンチにたくさんのゲームをリリースしました。しかしその後、しばらく谷間ができてしまいました。
一方でスイッチでは、任天堂というファーストパーティの視点から非常に計画的に動きました。本体同時発売ソフトの『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は信じられないほどの成功をおさめました。ハードを牽引し、『ゼルダの伝説』フランチャイズに新規顧客を呼び込んでいます。
ゼルダに続いて『マリオカート8 デラックス』や、その他の任天堂タイトルを途切れることなくリリースしてきました。(Wii U の経験は)次につながる本当に重要な教訓でした」
任天堂は『ゼルダの伝説 BotW』と『1-2-Switch』『いっしょにチョキッと スニッパーズ(デジタル専売)』を本体と同時に発売した後、4月に『マリオカート8 デラックス』、6月に『ARMS』、7月には『スプラトゥーン2』と、間を開けることなく、ほぼ毎月のように注目タイトルを世界同時期に発売。
一方で Wii U の時の任天堂は、ハードと同時に『Nintendo Land』と『New スーパーマリオブラザーズ U』を発売した後、3ヵ月間が空いて『ゲーム&ワリオ』を出すのがやっと。さらにその次の『ピクミン3』まで4ヵ月待たされることとなりました。『スプラトゥーン』や『スーパーマリオメーカー』など Wii U で生まれた魅力あるソフトもいくつかあったものの、初期の躓きから挽回のために後手後手になり、ソフト不足に悩まされ続けたというのが全体を見た時の Wii U の印象です。