『スーパーマリオ オデッセイ』のプロデューサーであると同時に、Nintendo Switch (ニンテンドースイッチ) の総合プロデューサーでもある任天堂の小泉歓晃氏が 4Gamer.net のインタビューに応じ、初動の振り返りや来年以降の展望について語っています。
海外では供給不足が幾分解消され始めたものの、国内では未だ品薄が続いているスイッチの普及について小泉氏は「想定していたよりも早く推移しているというのが正直なところ」と回答。
任天堂は当初、まずは任天堂ファンが手に取り→外で遊んだりするなどして広がっていくという過程で、1〜2年かけてスイッチのコンセプトが浸透していくだろうと予想していたそうです。しかし実際には、非常に早く正確にハードのコンセプトが理解されています。
その理由については、“「いつでも、どこでも、誰とでも」と一言で言えるくらいにシンプルなものだったことにあると思います” と小泉氏。ハードの特徴を端的に表すコピーと、それを体現できるソフトがあったことで、前世代のような躓きはありませんでした。
また日本では、10代後半〜20代前半の売れ行きが好調だという、従来の任天堂が比較的苦手としていた世代にヒット。これはそうなるよう任天堂が何か特別なことをしたわけではなく、「誰かと一緒に遊ぶというシーンを作るのがうまいのが、このあたりの年代なのではないか」と分析しています。
スイッチにはコントローラーの Joy-Con が標準で2個ついているので、学校の休み時間など1人で遊んでいたときでも、面白そうだと感じ集まった人とも、Joy-Con を渡してすぐに2人プレイを始められます。
テレビにつなげば据置型ゲーム機体験ができるけれども、携帯型ゲーム機のように持ち運べるようになったことで、ニンテンドースイッチは据置型ゲーム機として初めて、テレビ依存から脱却したハードとなりました。
今までの据置ハードは「バカンスと戦っていた」
小泉氏は今までの据置ハードを「バカンスと戦っていた」と表現。
「お金と時間を使えばバカンスでハワイ旅行ができるが、そこに “そのお金と時間を使って、家でマリオを遊んでください” と呼びかけていたのが今までの据置ハードだった。つまり、真っ向からバカンスと戦っていた」とコメント。なるほど。
一方で、携帯型ゲーム機は持ち運びができますから、ニンテンドーDSやニンテンドー3DSなんかではそのバカンスのお供として、旅先でも移動の合間などに遊んでもらうことができました。これが「とても羨ましかった」と、据置ハードのソフト開発を担当していた小泉氏は感じていたそうです。スイッチは据置体験の持ち運びが可能になったので、携帯機のようにバカンスと共存できるようになりました。
安定したソフト供給体制「来年以降も息切れはしないように編成。任天堂IPもまだまだ残っています」
対応ソフトを安定して供給できる体制が整っていることについて。
ニンテンドースイッチの戦略で見逃せないのは、発売開始以来、任天堂が安定したソフト供給を続けられていること。3月のローンチで『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『1-2-Switch』、4月に『マリオカート8 デラックス』、6月に『ARMS』、7月に『スプラトゥーン2』、9月に『ポッ拳 DX』(ポケモン)、10月に『スーパーマリオ オデッセイ』、そして12月には『ゼノブレイド2』が発売されます。
完全新作ではないものの、任天堂ハードでは定番の『マリオカート』が発売から2ヵ月経たずに発売され、夏には Wii U で誕生し任天堂の新たな顔となった『スプラトゥーン』の新作が発売。マリオやゼルダといったベテランだけでなく、新規IPの『ARMS』も投入し、RPGファン向けには『ゼノブレイド』もありますと。
4Gamer のインタビュアーは「まるでゲーム機の1サイクルとされる5年間を、1年に凝縮したくらいの濃密さ」だと表現。実際、ハード1年目にして任天堂の注目ソフトがこれだけ揃うのは過去に例がありません。
主力ソフトが1年目に続々と発売されたことで、2年目以降のラインナップが息切れしてしまわないか心配にもなりますが、小泉氏は「息切れはしないように編成をしています。任天堂のIPもまだまだ残っていますし」と自信をのぞかせます。また「ハードの使い方を研究されたソフトメーカーさんがたくさん出てくるでしょうから、そこにも期待しています」と述べ、サードパーティタイトルの充実にも期待を寄せています。
任天堂の主要タイトルで2018年以降に発売が期待されるのは、すでに発表済みのものだと『星のカービィ スターアライズ』と『ヨッシー』、『ファイアーエムブレム』、『メトロイドプライム4』、そして『ポケットモンスター』。
未発表では、スマホ版と連携する計画のある『どうぶつの森』、また先日の本体アップデート「Ver. 4.0.0」で USB 機器の対応が増え、ゲームキューブコントローラ操作も出来るようになったことから『大乱闘スマッシュブラザーズ』も期待されています。
『ポケモン』『スマブラ』『ぶつ森』は本編なら1000万本を上回る屈指の人気を誇るシリーズ。もし1年目のソフトにまだ余力がある中で、2年目にすべて出揃うのであれば、相当なインパクトを残す年となりそうです。それにしても遊ぶ時間が足りません。
新作プロジェクトに取り組んでいることは明かされていながら、まったくその動きが見えてこないレトロスタジオの動向や、ネクストレベルゲームズその他の任天堂関係会社のスイッチ向け新作も気になります。
発売前は、前世代機 Wii U の不振もあってネガティブな見方もあったスイッチ。ですが蓋を開けてみれば、3月発売ながら、わかりやすいコンセプトと切れ間のない注目ソフトの投入で絶好調。勢いを保ったまま初のホリデー商戦を迎えようとしています。携帯機としての側面も持つハイブリッドコンソールとして、今後、両者の需要を取り込んだ巨大な市場を築いていけるでしょうか。
|