スタイリッシュなアニメーションによるドキュメンタリー映画『戦場でワルツを』。好みのグラフィックだなと映像に惹かれて見てみたら、そりゃあもう想像以上に重たい映画でした。軽い気持ちでは見られない、でも見てよかった。争いが耐えない世界の、一つの現実。
主人公であり、この映画の監督であるアリ・フォルマンは実際にレバノン侵攻に参戦した元兵士で、失われてしまった記憶の断片を取り戻すために、かつての戦友を訪ね歩き、自分の過去を探る。
フォルマンや戦友たちが過去のエピソードを語り、フォルマンは徐々に記憶を取り戻す。そして、アニメーションから実際のニュース映像に切り替わる衝撃のラスト……!! 目を背けたくなるような映像が飛び込んでくる。
記憶の中の世界はアニメならではのデフォルメや表現力で、音楽も素晴らしい。アニメ表現のおかげで残酷さは薄れてはいるけれど、これが現実にあった出来事だなんてと途中で見るのを止めたくなるくらいむごい画もあったりする。実写だったらとても映せないような。
途中で「解離」の話も出てくるし、ラストのあの画を強調するためにアニメにされているのかなと思ったりして。別の映画だけど『ホテル・ルワンダ』で出てきた「この映像を見ても“怖いね”と言うだけでディナーを続ける」という台詞が浮かんで、ああ、自分はこのディナーを続ける側に居るんだなとハッとしましたね。素通りしちゃいけないね。
2006年のイスラエル。映画監督のアリは、友人のボアズから26匹の犬に追いかけられる悪夢の話を打ち明けられる。若い頃に従軍したレバノン戦争の後遺症だとボアズは言うが、アリにはなぜか当時の記憶がない。不思議に思ったアリは、かつての戦友らを訪ね歩き、自分がその時何をしていたかを探る旅に出る。やがてアリは、ベイルートを占拠した際に起きた「住民虐殺事件」の日、自分がそこにいたことを知る…。
|