2017年3月の発売開始から初の年末商戦を経て、すでに Wii U の累計1356万台を上回る1486万台の出荷を達成している「Nintendo Switch (ニンテンドースイッチ)」。任天堂は3月末までに今期1500万台の出荷を見込んでいて、達成できれば1800万台近い数の本体を1年で出荷することになりますが、2年目以降のビジネスについて、第3四半期決算説明会の質疑応答で任天堂の幹部がコメントしています。
宮本茂氏からは、従来のハードのライフサイクル(5〜6年)よりも続くようにできれば面白いとの発言も。
ニンテンドースイッチは従来の任天堂コンソールよりも息の長いハードにしたい考え
非常に好調な1年目を過ごしたニンテンドースイッチ。ですが任天堂据置ハードは早い時期にピークアウトしてしまい、最終的なハード寿命が必ずしも長くないことから、スイッチも2年目以降に勢いを維持できるのかが注目されています。
任天堂史上最も売れた据置型ゲーム機である、累計1億台以上を販売した Wii も、ピークとなる単年度2500万台を達成したのは2009年3月期(2008年4月〜2009年3月)でした。そのため任天堂自身も Nintendo Switch ビジネスをさらに拡大していくために「2年目は大事な年」だとの認識を示しています。
君島社長はスイッチの2年目に取り組むべきこととして、
- スイッチの特長である「いつでも、どこでも、誰とでも」(遊べる)を体験できるソフトを今後も数多く発売してコンセプトを理解してもらうこと
- 顧客それぞれに独自の遊び方を見つけ、楽しんでもらうこと
の2点を挙げています。任天堂はスイッチの機能を活用した新たな提案として『Nintendo Labo』を4月に発売予定。他にも、この日発表できなかったものを含めて順次発売であるほか、「皆様から期待されるゲームをつくり続けていきます」とコメント。普及に弾みをつける隠し弾がまだ控えていそうです。
さらに、
さらに先のお話になりますと、いくら計画をお話ししても思う通りにはならないのが娯楽ビジネスですので、「新しい⾯⽩いものを継続してつくり続けたい」とだけ申しあげますが、期待していただけると⼤変ありがたく思います。
と続け、従来の延長線上にない新しいカタチの提案もまだ控えていそうな雰囲気です。
⾼橋伸也氏は「今年は、より多くの皆様に楽しんでいただけるものと、ゲームファンの⽅々にもしっかり遊んでいただけるものの両⽅を確実につくっていくことが重要だと開発陣は思っています」とコメント。2017年は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『マリオカート8 デラックス』『スプラトゥーン2』『スーパーマリオ オデッセイ』など、コア層もライト層も楽しめるソフトを自社で発売した任天堂。スケジュールが大幅に遅れるなど不測の事態がない限りは、2018年も後半にかけて、ゲームファン向けの新作タイトルが登場してきそうです。『ポケモン』や『メトロイドプライム』は年内に間に合うでしょうか。
また宮本茂氏は「これまでのハードのライフサイクルは 5 年から 6 年ほどでしたが、それよりもっと続くようにできれば⾯⽩いと思いますので、どうぞご期待ください」とコメント。持ち寄って遊べるなどの携帯性を含め、これまでのハードにはないスイッチの特長を生かしたソフト開発を行い、スイッチのビジネスを持続していけるよう取り組んでいくとしています。
5〜6年よりもっと続くように
ライフサイクルの長期化を目指したときには、ニンテンドー3DSなどの携帯型ゲーム機や、他社の現行据置型ゲーム機 PlayStation 4 / Xbox One がヒントになりそうです。「Nintendo Switch」ファミリーとして、スペックアップした上位モデルやバリエーションを用意するプランです。
任天堂は携帯型ゲーム機において、3DSに限らずDSやゲームボーイといった過去ハードでも性能向上や新たなバリエーションモデルを適時投入し、ハードの寿命を伸ばしてきました。
現行据置型ゲーム機では PS4 Pro、Xbox One X といった PS4 / Xbox One の上位機種が発売。それまでの機種のように、あるタイミングで完全な世代交代を行うのではなく、1つのプラットフォームの寿命を伸ばす方向へとシフトしています。
スイッチは現在でも、メモリ(ストレージ)の問題などマルチプラットフォーム化が難しい部分があるので、ソフトメーカーも継続的にサポートする息の長い製品としていくためには、どこかのタイミングで新モデル投入というのは十分にあり得るオプションに思います。
宮本茂氏から「私たちの究極の野望は Nintendo Switch を(⼀家に 1 台ではなく)“⼀⼈ 1 台”持っていただくことです」という発言がありました。任天堂はスイッチを据置型ゲーム機として売り出してはいますが、別の売り方、携帯型ゲーム機のように打ち出していく戦略も検討されていそうではあります。
前社長の岩田聡氏は開発部門再編に際して、プラットフォーム統合は「ハードが1種類になること」を意味しているのではなく、「何よりも貴重なソフト資産が、いろいろなハードで共有できるようになる」ことがポイントだと述べていました。プラットフォーム統合がうまく行けば、プラットフォームの種類を増やせるかもしれないと。スイッチの成功が2年目以降も続いていけば、スイッチを軸とする新たなハード戦略を見られるかもしれません。
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