9月の Nintendo Switch 版『FIFA 18』で、任天堂プラットフォームへ復帰をはたす Electronic Arts。世界的人気サッカーゲームは、EA が単に任天堂ハードへ戻ってきただけでなく、今後のスイッチ戦略を考えるにあたっても重要な意味を持つ1本となりそうです。
世界各国の EA の開発チームを率いる、ワールドワイドスタジオの EVP である Patrick Söderlund 氏は、英国のゲーム誌 EDGE の取材に応じ、Nintendo Switch の現状と、EA が今後もスイッチをサポートしていくのかについて語っています。
Söderlund 氏はまず、そもそも自分自身が熱狂的な任天堂信者であると公言。「この業界に導いてくれたのは任天堂だし、自分のスイッチも持っていて、持ち歩いている」と語ります。ただ、幹部だからといって個人の嗜好が必ずしもビジネスに反映されるわけではありません(そうなる場合も珍しくはありませんが)。
「我々は消費者やプレイヤーがいるならどんなプラットフォームへも行く」と語る Söderlund 氏。EA はスイッチの普及に貢献したいと考えており、そのために用意したソフトが『FIFA 18』だというわけです。
スイッチ版の『FIFA 18』はゲームエンジンが Frostbite ではなく、そのため PlayStation 4 / Xbox One といった現行機向けバージョンと比較すると「The Journey Season 2」など一部モードやシステムが搭載されておらずフルスペックの代物ではありません。
それでも、Wii U 版では搭載されなかった「FIFA Ultimate Team」が搭載されていたり、任天堂ハードで発売される『FIFA』としては最もモードが充実。加えて、スイッチの特性を活かして外へ持ち出せる “最高のポータブル FIFA” であると EA は説明します。
つまりはポータブルな部分と、気軽に対戦ができる部分がどこまで訴求するかというところに、スイッチ版が売れるか否かがかかっているわけですけれど。
EA がスイッチの普及に貢献したいと考えている一方で、社内の開発リソースは有限です。「どこかの時点で、数字(売上)も重要になってくる」と Söderlund 氏。プラットフォームをサポートするにあたって、まずは『FIFA』のような大規模タイトルで技術的なノウハウ構築も兼ねた開発を行い(Söderlund 氏によれば、もしかするともう2つくらい別タイトルがあるかもしれない)、それらが上手くいけば、可能なかぎりの EA のポートフォリオを提供しない理由はないんだと語ります。
「そうなることを願っていますし、それが個人的な野望でもあります」
最近の EA の開発姿勢を見ると、以前のマルチプラットフォーム路線は鳴りを潜め、据置型ゲーム機向けタイトルは PC とのマルチプラットフォームを想定。家庭用ゲーム機向けにはハイスペックな PS4 / Xbox One 向けに新作を投入。携帯機向けのラインは凍結し、代わって収益性の高いスマートフォン向けに力を入れています。
据置でも携帯でもない第3の存在となっているスイッチの普及は EA のビジネスを後押しする可能性があり、見込みがあるのであれば、収益の柱となっている EA SPORTS の各種「Ultimate Team」は、少なくとも展開したいところでしょう。