任天堂の古川社長は2021年11月5日、経営方針説明会/決算説明会のプレゼンテーションの中で、 Nintendo Switch ビジネスの成功により想定を大きく上回って増加した手元資金の新たな活用分野について説明しました。
従来の研究開発投資・設備投資に “加えて” 中長期的に投資していく分野は、大きく「ソフトウェア資産の蓄積」と「お客様との関係性を維持・拡大するための基盤」であるとし、「ソフトウェア資産の蓄積」には最大 1,500 億円規模、「お客様との関係性を維持・拡大するための基盤」には最大 3,000 億円規模を投資する計画であることを明らかにしました。
- ソフトウェア資産の蓄積「ゲーム」 : 最大 1,000 億円
- ソフトウェア資産の蓄積「ゲーム以外の娯楽」 : 最大 500 億円
- 顧客との関係性を維持・拡大するための基盤 : 最大 3,000 億円
ソフトウェア資産のうち「ゲーム」に関しては、最大 1,000 億円をかけ、任天堂グループ内部のソフト開発体制の拡張・整備を推進していきます。一方で有力スタジオとのよい出会いがあった場合に M&A (合併や買収)を活用すること否定していません。とはいえ任天堂のものづくりの文化が十分につたわるよう、まずは自社組織の規模を有機的に拡大することに優先的に取り組んでいくとしています。
ゲームビジネスと親和性の高い領域では最大 500 億円をかけ「ゲーム以外の娯楽」のビジネス機会も追求します。そのためゲーム以外の分野でもソフトウェア資産の構築に努めていきます。『スーパーマリオ』に続く新しい映像コンテンツ開発にも取り組んでいくと、改めて表明。
もう1つの柱「お客様との関係性を維持・拡大するための基盤」については、ユーザーやファンんにより良い体験やサービスを提供するため、また新しい付加価値を創造するため、その基盤となるニンテンドーアカウントでできることを拡張するという視点を中心に注力。
古川社長によるとこの取り組みは単にデジタル化を推進するということではなく、ハード・ソフト一体型のビジネスを基軸としている任天堂だからこそ可能になるサービスの基盤構築を目指していくとのこと。
顧客との関係性の維持・拡大のために、My Nintendo サービスや My Nintendo Store の拡充に取り組むほか、ニンテンドーeショップをアジアや南米地域でオープンしたように、任天堂のソフトウェアを購入できる手段を増やす取り組みも含まれます。また直営店の国内外での新規展開の検討など、顧客との直接的な接点を増やすことも含まれています(Nintendo OSAKA に続く国内第3、第4店舗目もありえる?)。
さらにハード・ソフト一体型ビジネスを基軸として、ソフトウェア資産を提供するための基盤技術の研究開発や、これを実現するための新しいパートナーシップの構築のためにも手元資金の活用を検討していくとのこと。
任天堂の研究開発費は近年増加傾向にあり、2021 年 3 月期実績は 932.5 億円。2022 年 3 月期の予算は 950 億円と 1,000 億円に近い規模となっています。通常の研究開発費に加えてさらに最大 4,500 億円規模の投資を今後数年にかけて行い、任天堂らしいユニークなハード・ソフト一体型のビジネスや関連サービスをさらに強化していきます。