【F-ZERO】新作が途絶えている理由は『マリオカート』と開発コスト?元任天堂の開発者・今村氏が語る


F-ZERO

 

多くのキャラクターを抱える任天堂。定期的に新作が発売されるフランチャイズがある一方で、長い間休眠状態にあるフランチャイズもあります。そのひとつが『F-ZERO』。2004年に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト『F-ZERO CLIMAX』を最後に、約20年新作は発売されていません。

2021年まで任天堂に在籍し『F-ZERO』生みの親の一人である今村孝矢氏は海外メディア VGC(Video Games Chronicle)とのインタビューで、『F-ZERO』の新作が途絶えている理由についていくつか考えを述べています。

『F-ZERO』の新作についての話が持ち上がるときについてくるのが、“新しいアイデアが必要” という言葉。他のシリーズでももちろん、新作を開発するとなれば新しいアイデア新しい要素が盛り込まれてきますが、『F-ZERO』の場合はより大きな変革が要求されているようにも見えます。この辺りの高いハードルについて今村氏は「売上の問題だと思う」と回答。

『F-ZERO』シリーズはスーパーファミコンと同時発売だった初代が最も売れ、ゲームキューブの『F-ZERO GX』ではゲーム評価と共にセールスも盛り返したものの、ゲームボーイアドバンス向けに発売されたその後のシリーズは伸び悩み、尻すぼみに。

また同じく今村氏が深く関わった『スターフォックス』が『F-ZERO』に比べて任天堂からの注目度が高い理由について、レースゲームとして見ると任天堂には『マリオカート』という世界的な人気タイトルがあり、『F-ZERO』新作の開発には莫大な予算が必要になるからだろうと。また宮本茂氏は『スターフォックス』に対する思い入れがかなり強い印象ですと今村氏は述べています。

宮本氏は任天堂のソフト開発トップであり『スーパーマリオ』『ゼルダの伝説』『ドンキーコング』『ピクミン』などのほか、『F-ZERO』『スターフォックス』の生みの親のひとりでもあります。

しかしシリーズの新作が発売されていないからといって任天堂が『F-ZERO』を忘れたわけではありません。『マリオカート8』では『F-ZERO』を題材にしたコースやマシンが追加コンテンツとして配信され(『マリオカート8 デラックス』には予め収録)、『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズにも初代から全作品、レギュラーで「キャプテン・ファルコン」が参戦し続けています。

Nintendo Switch の有料オンラインサービス「Nintendo Switch Online」では『F-ZERO』『F-ZERO X』が配信されています(『F-ZERO X』は「+ 追加パック」加入が必要)。

『メトロイド』のように外部のゲーム開発会社へ委託され、新たな解釈、新しいアイデアとともに復活をはたしたフランチャイズもあります。『F-ZERO』も同じ仕組みが採用される可能性はないのでしょうか。

今村氏は外部スタジオと連携するメリットを認めつつ、慎重に検討を進める必要があると指摘。

「IP を復活させるのは簡単ですが、本当にお客様に満足していただけるものを制作するには慎重に検討する必要があります。現在『メトロイド』を制作している海外スタジオも、慎重に選んだ結果だと思います。個人的には昔ながらの2Dスタイルの『メトロイド』は大好きです。費用面を考えると、任天堂にはより重要なタイトルがあるために多くの人は『F-ZERO』のような規模のフランチャイズに携わることができません。任天堂の開発者だけですべてを管理するのは難しいと思います。ただ任天堂タイトルを作りたいと考える人はたくさんいるでしょうから、任天堂ゲームを開発できると信頼できるチームに委ねることもありでしょう。『スーパードンキーコング』シリーズはどうなりましたか」

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